貞操帯考
貞操帯なる物を諸君は知っているだろうか。無論賢明なる読者諸兄は御存じであろうが、一応簡略な説明を附記しておくと、装着者の性交や自慰を防ぐ施錠装置つきの下着である。元は十字軍の遠征に出る男達が自分の妻や恋人の貞操を守るために着けさせた物が起源だという説があるが、実際の所は定かではない。
さて、何故私が唐突にこんな話を始めたのかであるが、最初に言ってしまえば、私がこの一連の文章で主張したいのはまさに貞操帯の復活なのである。とは言え、決して従来の意味での復活を求めるのではない。ウーマンリブの現代に何を時代錯誤な事を言っているのかと憤慨、或いは軽蔑する女性も居るだろうが、そこをぐっと飲み込んで続きを読んでいただきたい。
早々に誤解を解くべく意図を説明すると、女性の自衛手段の一つとして貞操帯を復活させようと言う事なのである。女性は有史より、常に性犯罪の危険性と隣り合わせにあったと言っても過言ではない。現在では法律も整備、充実してきてはいるが、根本的なところで危険にさらされているのだ。
何もそう難しい言い回しをするまでもないだろう。要するに、女性より男性の方が力が強いと言う事である。
衝動的に行動に及ばれた時、行為が終わった後に法律で犯人を裁く事は出来ても、当座の犯行を防ぐ事は出来ないという問題が現在の社会制度には存在する。ストーカー被害に対する警察の方針も未然に防ぐ方へと変わってきているものの、怠惰な警察官がいる事も過去の事件等から明らかである。当座の犯行から身を守る為には、自ら防護策を講じる必要があるのである。
また、一般の女性よりもさらに非力な子供に対する性犯罪も増えている現代では、貞操帯はそうした犯行から子供を守るための大きな力となるはずである。
かかる理由より、私は女性の貞操帯着用を推すのである。貞操を管理されるのではなく、自らの手で完全なる貞操の管理をするためにこそ貞操帯を復活させるべきなのだ、と私は考えるのである。
さて、貞操帯の復活と書いたが、当時使われたものをそのまま再現したでは余りに使いにくい。ここは一つ、現代風にリニューアルしてみようと思う。
まず貞操帯に二つのスタイルを設ける事を私は提言する。それは簡易型と従来型である。簡易型は着脱が比較的容易なものである。このタイプは下着と組み合わせて使い、排泄行為時にはこれを外すことになる。一方従来型はそれ自身に下着としての機能を付加し、排泄時にもこれを外すことなく行えるようにする。
簡易型の利点といえば、やはりこのお手軽さであろう。ともすればナプキン等よりよほど扱いやすいのではないかと私は考えている。この場合、頻繁に付け外しをしなくてはならないから鍵は簡略である必要がある。また、付けたまま排出を行えないことから、極力壊れにくい構造でなくてはならない。
これらを踏まえて、私はナンバーロック式、或いは南京錠タイプの鍵を推奨する。特にナンバーロックは鍵を持ち歩く必要がないので便利であろう。これは従来型にも言えることだが、施錠部は複数作るべきである。ただし、どれか一カ所でも外れたら取り外し出来るものとする。
と言うのも、貞操帯を着用する上で最も恐ろしい事象の一つとして、鍵が壊れて貞操帯を外すことが出来なくなる事がある。排泄に支障の無い従来型ならまだしも、排泄時に外す必要のある簡易型では、これは重大な問題になる。複数の施錠部を作ることで、この問題の起こる可能性を大幅に下げる事が可能となる。複数の鍵が同時に壊れる可能性が極めて低いことは明らかで、このやり方は特別な技術を必要としない割には効果が高い事が分かる。是非とも採用していただきたい。
簡易型がどれだけ性犯罪に対して効果があるかだが、やはり簡易性を追求したため、その効果は低いものとなっている。痴漢等には効果があるだろうが(局部に手をやった時、冷たく堅い金属の感触があればさぞかし白ける事であろう!) 、その犯行が強姦レベルまで行くとその効果は薄くなると想像出来る。外出先で外す事を前提としているため、犯行時にもやはり外すことが可能なのがその主な理由である。南京錠等なら鍵は装着者が常に身に付けているし、ナンバーロックなら暴力やナイフ等の凶器を用いて番号を聞き出すことが可能なのである。
そう考えれば、やはり従来型は簡易型より遙かに効果がある。外出先で外す必要がないため、鍵を持ち歩く事もなく、仮に先の様な状況になっても誰にも(装着者自身ですら)外すことが出来ないのである。ただし、簡易型に比べ相当高価な品になるのは否めない。尿道口及び肛門の位置は千差万別であり、長時間着用しなくてはいけないことを考えると、どうしてもオーダーメイドにならざるを得ないのである。
また、衛生面の問題がある。やはり長時間の貞操帯の着用は通気が悪くなるため衛生上良くないのである。それに、貞操帯を付けたまま排泄を行う時、排泄物の一部が恥丘に残留する可能性もある。
通気の問題の解決法として、微細な穴を穿つと言う手段が考えられる。また、多孔質の材料を用いる事も検討したい。金属でも粉体加工(金属加工の方法の一つ。粉末状の金属を型に入れて押し固め、焼結して整形する手法)を行えば多孔質に仕上げる事は可能である。だが恐らく穴を開ける方が安く上がるだろう。穴を開けない場合より多少強度は落ちるが(穴周辺に応力が集中することにもなる)本来の目的に支障をきたさない程度であろうと推測している。
排泄物の問題の解決策としては、肛門側についてはガイドをつけると言う方法が考えられる。肛門部に開けられた穴の縁を貞操帯の内側に僅かに盛り上がらせ、その極々短いパイプ状の部分を肛門に挿入するのである。こうする事で貞操帯の内側に便が残留する可能性は低くなる。肛門には伸縮性があるので、貞操帯を十分に密着させる事が出来る。さらにウォシュレットすら利用可能になるのである。
こんな事をせずとも、性器部からY字型にベルトをのばして肛門部を迂回させれば便の排泄は可能になる。だが、私の考慮した方法には肛門性交を防ぐことが出来るという利点がある。より完全な貞操の管理のためには肛門性交も防がなくてはならない、というのが私の意見である。
この方法は残念ながら尿道口には使用出来ない。肛門に比べて遙かに繊細な器官だからである。今思いつく対策としては、穴をやや大きめに開ける事と、流入防止のために防壁部を設ける事である。少なくとも性器部に尿が残留する事は防げる、と私は考えている。
さらに消毒として、小さな穴を開けそこからアルコールを噴霧する方法を考案している。噴霧器は貞操帯そのものとは別で持ち歩く事とする。恐らく手のひらサイズ以下の噴霧器でも十分な効果を発揮するだろう。
なお、ここで着け心地を良くするために貞操帯の内側に肌触りの良い布を貼る事を提言する。簡易型は下に下着を着用するが、従来型は貞操帯が長い時間、直接肌に触れることになるため少しでも着け心地を良くすることが大切なのである。少量のアルコールならば噴霧したとしてもすぐに乾くから問題はないと考えている。この場合、尿が性器部に流れ込んでくることは極力避けなくてはならず、着用者の身体に合わせて特に緻密な設計をする必要がある。
今までの考察では原則として金属を材質に使うことを前提としてきた。強度面が最大の理由だが、個人的なイメージのせいもある。しかし、本当に金属を利用するのがベターなのだろうか。金属は確かに頑丈だが、重いと言う欠点がある。最初の方にも書いたが、私は貞操帯を子供達を性犯罪から守るためにも使用したいと考えている。成長期の子供のためには是非とも軽い物を作りたいところである。ここで一つ、貞操帯の材料について考えてみたいと思う。
利用出来る可能性のある材料として、レザー、ゴム、プラスティックを考えてみた。レザーは高価なことと、洗浄が容易で無いことを考えて選択肢から除外する。残るはゴムとプラスティックである。ゴムは伸縮性があるから一部材料として取り入れることで着け心地を良くすることが出来る可能性がある。問題点は何度も伸縮させる事で劣化するという点だろうか。だが、ゴムは安価なので、劣化したら取り替える、という形でも良いのかもしれない。
私が最も期待しているのは、プラスティックである。特に、ポリカーボネートという物質は軽量さ・耐衝撃性に優れている。その丈夫さは航空機の窓や建築材料、果ては機動隊の盾にまで用いられるほどである。やや気になる点として、原材料のビスフェノールAが内分泌攪乱化学物質、つまり環境ホルモンであるとして注目を浴びたという事実があるが、ポリカーボネートはほ乳瓶にも使われている材料なので、特に気にする必要もないと私は考えている。残念ながら余りプラスティックの性質や加工のし易さなどについて明るくないためこれ以上の考察は出来ないが、十分に期待できる材料だと考えている。
最後に、子供の貞操帯着用に関して考えてみる。成長期の子供の体型は常に変化するので、従来型の着用には向かない。必然的に簡易型を着用することになるが、体型の変化に合わせて細かな調整が出来るようにしなくてはならない。また、成長を妨げないよう極力軽いものにする必要がある。これを考えると、伸縮性があり、調整が容易なゴムと軽いプラスティックをメインに作るべきであると私は考える。この場合、ゴム製のベルトを用い、バックラーに施錠機構をつける形になる、と思われる。
これで女性用貞操帯に関する考察は一段落する。余談などは色々あるが、残念ながら今回それを語る紙面がないため、ここで一旦筆を置くことにする。
ちなみに現在、トーリーボーイ社、Neosteel社で金属製の貞操帯を購入することが可能である。興味のある方は一度調べてみてはいかがだろうか。
〈了〉