S.Kakapo
第一話:いきなり!?新たなる仲間!


「ぷりてぃ〜どり〜みんぐソォォォォォォドッ!!!!!」
あたしは無意味に絶叫した。
ステッキを軸に、ピンク色の光の剣が生まれる。
正確には剣状の魔術力場を形成したということになる。
「これでおしまいっ!」
いい加減見飽きてきたカウボーイっぽい衣装の男に向かって走っていく。
同じ格好をした奴等が2人その辺に倒れてるのは、さっきあたしがやっつけたからだ。
「うわぁァァァァァ!!!」
たった一人残された西部劇野郎(こういうとウグィスは可愛くない、萌えないって怒るけどそんなの知ったことじゃない)がヤケクソになったように手にした銃を撃ってくる。
見た目はマグナムだが実際は違う。
弾丸状に形成された魔術力場を放出するデバイスとなっているのだ。
早い話魔法で作られた弾を撃つ銃と思ってくれればいい。
普段はこんなややこしいこと言わないんだけど・・・。
(試験が近いからね・・・勉強しすぎかな?)
あたしは飛来する魔法の銃弾を巧みにかわしながら特攻していく。
顔の横を銀色の光が通り過ぎていく。
魔術力場形成時特有の空気がこげるような匂いが鼻腔に満ちる。
ドンッ!
・・・一発、かわしきれなかったみたい。
あたしの身体に衝撃が走る。
でも問題は無い。
メイド服のような妙にフリルの多いこの恥ずかしい服は、防御力場を常に形成しているのだ。
4000までのダメージを無効にするという優れものだ。
「あ・・・当たったのに何故!?」
カウボーイもどきの悲鳴のような声が聞こえる。
「MDフィールド、全開っ!」
あたしの声に合わせて普段は見えないようなレベルに抑えられている防御力場を最大限に展開する。
地面との間に生じた斥力でいっそう加速したあたしはステッキの剣を構えて一気に斬りかかった。
「しまっ・・・」
た、と聞き終えないうちにカウボーイもどきの身体は一刀両断されていた。
頚動脈でも斬ってしまったのか、勢いよく血が吹き出る。
しかし最大限に展開した力場があたしに降りかかる血を防いでくれる。
力場を展開したのはそのためだったりもする。
「お仕置き完了☆帰還しま〜っす♪」
ぶりっ子な声でそう言うとあたしは変身をといた。
「ふぅ・・・」
心地よい疲れに全身が包まれる。
「これ始めてから、いい感じにやせていってるのよね〜・・・。」
「萌たん!!!」
「わっ!」
いきなり大声で呼ばれてあたしは飛び上がった。
「なんだよ今の戦い方は!」
「何よ?カッコいいでしょ?」
「全然萌えないじゃないかぁ!最後とかもう本当に怖かったんだぞ!」
パンダの気ぐるみのようなのがあたしに向かって大声で喋っている。
こいつはウグィス。あたしにさっきの変身用の魔術書をくれたへんな生物?だ。
「だから萌えなくていいのっ!」
「あんな萌え萌えな格好してるくせに全然戦い方が魔法少女じゃないし!」
「だってあっちの方がすかっとするんだもん。」
「それと、『ソォォォォォォドッ!』とか言わない!『そ〜〜〜どっ♪』みたいな感じのほうがボクは萌えると思う!」
「てめぇの頭はそればっかりかぁぁぁぁ!!!」
ステッキが無いからかわりに足で思いっきり蹴り上げてやった。
「ひどいよぉぉぉぉぉぉ・・・・」
悲鳴でドップラー効果を起こしつつパンダは大空に吸い込まれていった。
「あ〜今日もいい天気だな〜っ・・・。おっと、そろそろお昼だから先輩を待ち伏せに行こっと♪」
あたしは七瀬萌。
ただ今、魔法少女やってます。

突然魔法少女なんてものになってから10日が過ぎた。
2日に一回くらいの割合で出てくるカウボーイもどき(あたし命名)を倒したりしてるけど。
相変わらず衣装は恥ずかしい。
「さぁ!適合者を探しに行くよ!」
「・・・だるい〜」
今やっと今日の授業が全て終わったところなのに・・・。
「そんなこと言ってちゃだめだよ!この星の明日の為に!」
「微妙にどっかのゲームぱくっても無駄なの・・・簡易魔術の授業はだるいんだもん・・・。」
ここで少し魔術について説明しておこう。
試験近いしね。
えっと、魔術は色々あるんだけど、あたしの習ってる西洋C系魔術には簡易魔術と儀式魔術っていうのがあるの。
簡単に言うと、簡易魔術って言うのはちょっと呪文となえたり印をきったりするだけで発動するタイプ。
あたしの先輩がやってるのもそれだ。
最も、先輩のはかなり高度な魔法だからあたしがやると1時間では発動しないと思う。
最低2時間はかかるかなぁ・・・。
はぁ・・・。
落ち込んでる場合じゃなかった。で、儀式魔法って言うのは酷い時には何ヶ月もかけて魔法陣を書いて、呪文を唱えて・・・ってやるタイプ。
召還魔法とかが含まれてるんだけど、時間をかけた分威力はすさまじいものがある。
隕石を召還したりもするって言うけど・・・ホントかな?
まぁそんな感じ。
「聞いてる?萌たん!」
「ほえ?」
「聞いてなかっただろ!?」
「何が?」
「・・・だから今日はもういいって話。でも一応帰りに少しくらい見回りをするからね。」
「そっか・・・前にカウボーイもどきをぶった切ってから2日たつもんね。」
「その言い回しやめようよ・・・。」

「そういえばさ、どうして魔術書に適合とかあるの?」
決まった見回りコースを歩きながらあたしはウグィスに聞いてみた。
基本的に人通りの少なそうな場所を中心としている。
なんてったってここは勇者志望者の集まる場所。
カウボーイもどきくらい簡単にやられてしまう。
そうだね・・・この星で魔術の研究がどれくらい進んでるのか知らないけど・・・。」
ウグィスはそう前置きして続けた。
「魔力の質は各個人で違うんだ。まるで遺伝子のようにね。例えば・・・」
「あたしの知り合いの若菜ちゃんは攻撃魔法はてんでダメだけど防御魔法は完璧!なのにあたしはどれもいまいち・・・とかそんな感じのこと?」
「そうだよ。実際はもっともっと細かく分かれてるんだ。あの魔術書は昔特定の個人に送られた物だから、その人と魔力の質が近くないと使えないんだ。70%以上一致すると一応使えるんだけど・・・。」
「そうなんだ・・・。」
「ボクは魔力の質をDNA分析するみたいに細かく分析できるんだ。ほら、その路地裏の方から来る魔力だったら適合率95%って感じで・・・ってえええ!!!?」
「ってことは新しい仲間ってこと!?」
なにやら路地裏ではもめているらしい。
時折魔術によるものっぽい光が漏れ、空気の焦げる匂いがする。
「なんか戦闘してるみたい!急がなきゃ!」
「魔力分析によるとカウボーイもどきが3人に・・・あとそれの上位クラスのが一体いる!」
「急ぐよ!」
あたしはウグィスの足を掴んで走り出した。
「ちょっと萌たん!頭こすれてるこすれてる・・・」

人気の無い路地裏はしかし意外と広い。
カウボーイもどきが3人。
そして・・・
「巫女さんと保安官?」
あたしは思わずつぶやいた。
なんだかシュールな光景だ。
ってそれどころじゃなかった!変身しないと!
「いやぁぁぁ!こないで下さいぃぃぃっ!!!」
巫女服の女の子はあたしより2つ3つ年下に見える。
綺麗な黒髪のボブカットが可愛らしい。
少し垂れ気味の大きな目には恐怖と混乱をたたえている。
「ちがうの!あたしは味方なの!助けにきたの!」
「来ないで!来ないでぇぇぇ!!!」
よく見ると女の子には右手が無かった。
左手を懐に入れ、出した鈴を鳴らす。
どうやら日本古来の魔術を勉強しているようだ。
同じ学校かもしれない。
女の子がなにやら叫ぶ。
呪文みたいだ。響きは日本語みたいだけどなんて言ってるかわからない。
不思議な力が発生し、女の子の所に近寄れなくなる。
「あたしは味方だってば〜!」
「無駄みたいだよ。パニックを起こして何も聴こえてない。」
保安官たちも近寄れなくなってるみたい。
防御力場だろうか。
「撃てっ!」
保安官達が銃弾を撃ち込んでくる。
ぎしっ、と力場が軋む。
あたしは何も出来ずに見てるだけ。
力場が路地裏の幅一杯に広がっててどうにもならないのだ。
ここでビームを撃つと女の子に当たってしまう。
もしくは力場に防がれてしまうだけだろう。
そこで思い出した。
あたしまだ変身してない。
「もえもえぇぇぇっ、ぷりてぃぃぃぃぃぃっ、えぼりゅぅぅぅぅぅぅしょんっ!」
焦ってるから流石にウグィスも萌えも何も言わない。
「一点集中だ!」
「ウイッス!」
保安官等の銃が同時に魔法の銃弾を撃ち出す。
ガシャァァァン!
ガラスの割れるような音と共に力場が壊れた。
貫通した銃弾が女の子の肩を貫いた。
「ひっ・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
女の子の絶叫が響いた。
瞬間。
女の子から何かが溢れた。
「何だこれ!魔力の質が全然違う物に変化した!?しかも・・・この強さはおかしいよ!そもそもこの星に存在しうるどの魔力にも該当しない!!!」
ウグィスが早口で叫ぶ。
「どういうことなのそれ!?」
「わかんない!」
保安官等も呆気にとられる中、叫び終わった女の子が顔を上げた。
黒かった目が、真っ赤になっていた。
「この痴れ者どもがっ!朕の身体を傷つけるとは何様のつもりかっ!」
「え?」
「何だと?」
その言葉は信じられないが女の子の口から出たものだった。
「うぬらの所業、万死に値するわっ!」
女の子は右手を振った。
無かったはずの右手を。
「魍魎よ!こやつらを黄泉の国に送ってやれ!」
瞬間、空間が変容する。
幾つもの穴が空中に開き、中から黒い何かが飛び出してくる。
「う・・・うぁぁぁぁっ!」
狂ったように撃ちつづけられる弾丸も女の子までは届かない。
届いた弾丸もその手前で消滅してしまう。
圧倒的な力。
漆黒の奔流にたちまち保安官達は飲み込まれた。
ふと、女の子がこちらを向いた。
「・・・どうやらうぬは敵ではないようじゃな・・・。ふむ。一安心じゃ。」
「あの・・・貴女は・・・?」
「異界より来たりてこの娘、緋諸木 斎(ひもろぎ いつき)に憑いてる者じゃ。右腕をもろうての・・・。」
「な・・・。」
「昔この娘が朕と接触した時・・・むっ・・・。」
「どうしたんです!?」
「この娘の魔力が限界を迎えたようじゃ。朕がこちらに出ていると魔力を食うものでな・・・。」
そこまで言い終えて、女の子は気を失った。
「あ、気失っちゃった。どうしたら、いいと思う、ウグィス?」
突然、仲間(候補?)の巫女が倒れちゃって、どうしたらいいかとあたしはウグィスに意見を求めた。
「う〜ん、そうだ!萌たん、この子のことはボクにまかせてくれないかなあ。いい考えがあるんだ」
「へ〜、どんな考えよ。聞かせてくれない?」
「だめだめ、それはあとのお楽しみだよ。それじゃ、早速作業に取り掛かるから、じゃあね」
そう言うとウグィスは巫女少女と一緒にあたしの目の前から消え失せた。
いっそこのまま永遠に消えてくれればいいのに、と思ったのは内緒だ。


その晩、あたしは家でTVを見ようと思い、スイッチをいれた。すると、どのチャンネルも同じニュースを流していた。そのニュースとは、
『緋諸木家宗主の長女行方不明』
という、ものだ。
緋諸木家というのはあたし達のすんでるタマツクリ国を霊的な力で守る、タマツクリ国守護三家の一つで緋諸木家といえばその筆頭だ。どこの局もこのニュースを報道するのもわかる。
で、あたしも大変なことだなあ、って思いながらニュースを見てたら、その行方不明だっていう女の子の顔写真が流れた。その顔はというと・・・・・
「あんときの子じゃないのよ!!」あたしは思わず(心の中で)叫んでしまった。危ういところだった。もし、口になんかだしてたら、一緒に見ている家族から問い立たされるにちがいないもん。そして、警察も呼ばれて、どこで見たとか聞かれるしね。まさか、変なパンダが連れて行きましたなんて言っても信じてくれるわけないしね。
そう思っている間もニュースは流れ続け、その子に関する情報が読み上げられていく。
『え〜、この少女は右手と引き換えに異界の物の怪と契約しておりまして、その力は緋諸木家のなかでも1,2を争う程のものらしく、現在はまだ力は使いこなせていませんが、もし使いこなせるようになると、緋諸木家を継ぐのは確実視されています。また、この件に関しましては、』
そこまで、聞いてますます確信を深めたあたしは自分の部屋に戻って、ウグィスを呼び出した。
すると、ウグィスはすぐに現れた。
「丁度よかったよ、萌たん。ボクも君に連絡がとりたかったんだ」
「どうしたの?」
するとウグィスは真面目な顔(本人談、あたしにはやっぱりただのかわいいパンダの顔だ)
「実は3人目の仲間の居場所がわかったんだ」
「えっ、ほんと。じゃあ、早速そこに行かないと」
「まって、問題はその場所なんだ。これを見てくれないかな」
そう言ってウグィスは地図を(どこからか)取り出したそして、指したのは、
「あれ、あたしの学校?」
「違うよ、もっとよく見て」
そういわれて、15.0の眼を凝らしてみてみる。
「えっと、学校の・・・・裏山?」
「そう、君の学校の裏山だ。そしてボクの調査によるとそこは敵の臨時基地になってるんだ」
「え。だって3人目の仲間はそこにいるんでしょ?」
「そう。そして、さらに調査をしていったら、恐ろしい事実が判明したんだ。」
「な、なんなの、恐ろしい事実って」
あたしが聞くと、ウグィスは重々しく言い放った。
「3人目の仲間は敵なんだよ!」
「え!?」
一瞬、あたしはウグィスの言ってることを理解できなかった。
「ど、どういうことよ、それ」
「うん。じゃあ、今度はこれを見て」
ウグィスは私の本棚から勝手に求人情報誌を抜き出した。
「ちょっと、何人の本棚をまさぐってんのよ!」
「気にしない気にしない。あったこのページだ。」
「気にするっつーの」
ぼやきながらも、開かれたページを見てみると、そこには
急募秘密基地幹部。時給880円という文字が躍っていた。
「こ、これは?」
「見ての通りだよ。3人目の仲間はこれに採用されたんだ」
「そうか、敵側につけば時給880円ももらえるのか、敵側にいこうかな。」
「ん、萌たん、何か言った?」
「いや〜なんでもないわよ」
「そう。じゃあ、3人目は君に任るよ」
「え、なんで。ウグィスは手伝ってくれないの?」
「ボクは忙しいんだよ、昼間の女の子にアレをしないといけないんだから。」
その言葉であたしはウグィスを呼び出した理由を思い出した。
「その女の子のことなんだけど・・・・・」
あたしがその子のことについて話すと、
「ふーん。すごい子なんだね、彼女」
「あんた全然すごいって思ってないでしょ」
「うん。ぼくこの星の者じゃないし」
「ところで、あんたさっきあの子にアレをするって言ってたけど、何をするつもりなの?」
「うん。洗脳だよ」
「せ、洗脳!?」
「そうだよ。だって、萌たんは変身しても、萌えさせてくれないでしょ。だから、ボク好みの萌え巫女少女にしようと思ってね。」
「あ、あんた何ふざけたことしてんのよ!あいてはあの緋諸木家よ!おとなしく返しなさい!」
「やだよ。せっかくボクを萌えさせてくれそうな子をみつけたんだ!絶対渡すもんか!じゃあ、任せたからね」
そして、ウグィスは消えた(逃げた)。


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<萌の用語説明>
変身魔法・・・それは禁止魔法の1つで、使うことが出来ないように、今の人種は遺伝子を組み換えられていると聞いたことがある。(萌談より)


魔術力場・・・純エネルギー系または物理系魔法の発動範囲。