B.Birutu

 第2話:狂人の衝動 

 

 まあ、彼女にはやたら強い庇護者がいるから、あんなパンダモドキが手を出すことは出来ないだろう。

 てか、今は他人のことに興味が湧かないんだ。

 今晩は先輩と夕食を食べる約束があるんだよ〜。6時に待ち合わせなんだよ。

 それで、今の時間はとゆーと……『6時5分』。

「ほぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!! また遅刻ぢゃん!!!!」

 私は、大慌てで窓から飛び出し、街を疾駆した。二階からの落下も気にならなかった。

 

(ここはどこだ……?)

 人々の群れの中を歩き、彼は疑問を持った。

 短パンにTシャツという格好の、痩せ型だがどこにでもいる青年である。

 ここは……そうだ、学園だ。ボクは長い改造と訓練を経て、ここに送られたんだった。

(あれ?なにをするんだったろう……)

 ああ、破壊と恐怖を撒き散らすんだった。いっぱい殺すんだ。腐ったやつらを皆殺しにするんだ。

(ボクって誰だ……?)

 くっ……。疑問にもならない疑問が、次から次へと浮かんでくる。いらいらがつのる。嫌悪感が限界まで来ている。

 どうしょうも無く腹が立つ。心と体がかみ合わない。胃酸がのど元までこみ上げる。

 ん?嫌な臭いがしてきた。強い魔力を持ったものの臭いだ。

 臭いの元を探すと、カフェテリアに座った女が目に付いた。あいつだ。

 女が近づいてくる、いや、ボクが歩み寄っているのか。

 向かいに座った女と他愛ない談笑をしている。

 うるせぇ。ムカつくんだよ。黙れよ。何なんだよ、お前。最低だよ。死んじゃえよ。

 まだくだらない会話を続けてる。

 黙れ黙れ黙れ黙れ。その声は腹が立つんだ。

 まだ止めない。

 許せないよ。こいつは、ボクをバカにしてるんだ。すこし魔力が有るからって、ボクを見下してるんだ。殺してやる、殺してやるよ。

 「あああぁああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 絶叫して女に飛びかかり、引き倒し、殴りつけた。何度も何度も殴りつけた。

 渾身の力を込めると、とても気分がよかった。

 気持ちいい。はぁ……はぁ。もっと。もっと……!

「あは……あは……あははははははははははははははははは」

 湧き起こる笑いの衝動が抑えられなかった。抑える必要も、抑える気もないけど。

 

 山本遊子は、カフェテリアで葉月佳織と会話していた。

「も〜え、遅いわねぇ。こんな時にも遅刻かしら?」

「萌は最近、なにやらやってるらしいですし、忙しいんじゃないでしょうか?メイド姿で街中を疾走するのを、たびたび目撃されてるらしいですよ〜」

「はは。なんでメイドなのよ。そんな趣味がある子だったの?」

「いや……そんなことはなかったと思うんですけど。カウボーイをシバキまくってるらしいですから、正義の味方のバイトでもやってるんじゃないですかぁ」

「カウボーイって、最近流行の例のテロリスト?なにやら物騒になってき____」

 そのとき突然、遊子に男が飛び掛ってきた。

 店内に悲鳴が満ちる。

 

 店の前まで来て、あたしは不思議に思った。

 なんで壁が穴だらけなのかな? まるで誰かが戦闘をしてるみたいだよ〜。

「あれ?この魔力の感じは、先輩??」

 そう思って入っていくと、先輩が顔を腫らしながら戦っていた。すごく痛そうだよ。

 先輩は魔法を放つ瞬間だった。

 その魔法が男に命中して、店が轟音に揺れる。

 そして、先輩がこちらに気付いたみたいで、叫んできた。

「もえ!早く逃げなさい!」

「なんでですかぁ?先輩の魔法が当たったんだから、そいつ生きてないでしょ?」

 と、あたしが言い終わらないうちに、こちらに注意を向けて隙を見せた先輩は、男につかまれていた。

 凄い力で先輩の首が絞めれれていく。首がみしみしと音をたてているのが聞こえた。

 男の強さを認識する前に、あたしは、夢中で動いていた。

「ぷりてぃ〜どり〜みんぐ16インチ砲!!」

 あたしの魔弾を顔面にあてても、男は効いた素振りも見せない。

「ぷりてぃ〜どり〜みんぐポジトロンびぃぃぃむ!」

 ステッキから全力で出したビームにも、気にした様子はない。

 何こいつ?固いわねぇ。

 でも、その間にあたしは男にかなり接近していた。

「ぷりてぃ〜どり〜みんぐそぉぉぉぉぉど改!」

 全長3メートル程の魔法剣が、天井を削りながら振り下ろされる。

 そこにきて、初めて男が動きを見せた。先輩を放して、右手で剣をつかんだのだ。

 剣と手の間から、凄い量の火花が散る。

 その火花を見たときには、あたしは吹っ飛ばされていた。飛びながら、自分が蹴り倒されたのだと分った。

 身動きが取れないとこから考えると、相当のダメージを受けたらしい。

 壁に激突すると思った瞬間、やわらかい感触が伝って来た。

 ウグィスが間に入って守ってくれたらしい。でも、この反発力はちょうどスポンジと同じだ。

(やっぱり、こいつ、ただのぬいぐるみなんじゃあ……)

「こいつはオルトメ・タパラの新兵器だよ。もう実戦に投入してくるなんて……。」

 と、パンダが発言するが聞く耳はない。

 あ!そんなことより先輩は?

 体が動かないので、目だけで様子を伺う。

 男は、また先輩をつかもうとしていたが、突然後頭部に魔法を受けて、吹っ飛ばされた。

 見ると、ローブ姿の集団が30人くらい出現していた。たぶん空間転移してきたのだろう。

 学園の講師たちだ。警備のために常駐してるってのを聞いたことがある。

 でも、講師が30人なんて人数は、普通、攻城戦でも動因されないよ。そんなにアノ男が強いってことなの?

「萌来てたんだ!先生を呼んできたから、もう大丈夫だよ」

 ぐったりした先輩を回収して、あたしに近づきながら、かおりんが言ってくる。

 そして、破壊が始まった。

 

 ものすごい轟音が響き渡っている。いや、もう音なんか聞こえない。

 30人の講師が扇状に陣形を組んで、一斉掃射を行っているからだ。それも、手にしたマシンガンをフルオートで連射しながら、同時に魔法も連射しているんだ。

 かっこ悪い戦術だけど、絶対にしとめるつもりらしい。

 殲滅戦は15分間続いた。弾薬も魔力も尽きたらしい。

 さすがに、講師も疲れ切った表情を見せていた。

 しかし、男は生きていた。

 服は焼け落ちて、裸だったけど、身体の外傷はかるい火傷くらいだ。

 それでも痛かったのか、講師連中を憤怒に満ちて睨みつけている。

 次の瞬間には講師陣の中に飛び込んでいく。狂ったように手足を振り回し、でたらめな戦いをする。

 消耗していた講師を倒すのは数分もかからなかった。

 そして、男の目があたしに向く。こっち見ないでよ〜。

 案の定、あたしの方に走ってくる。こっちこないでよ〜。

「何やってるの!早く逃げなさいよ〜!」と、かおりん。

「そんなこと言っても、腰が抜けてるんだよ〜〜。ふぇぇぇぇぇぇ」

 

 恐怖に思わずつぶった目を開いたあたしは、目の前の光景が理解できなかった。

 なんで先輩の背中がみえるんだろう?

 なんでその背中から腕が出てるんだろう?

 なんで赤い染みが広がっていくんだろう?

「大丈夫、も〜え?」

 先輩が口角から血をだしながら、振り向いてくる。優しい笑顔が痛いよ。

 何か言いたいけど、何も言葉がでないよぅ。

「禁忌魔法だけど、最期だから、黙っててね。」

 先輩はそう言って、魔法を発動させた。

 先輩の体が端から黒い霧の様なものに変わっていく。黒い霧は男に喰らいつき、肉をえぐり取っては、消えていく。

「がああああああああああ!」

 絶叫をあげ、いくら振りほどこうとしても、霧は離れはしない。男の体は、確実に蝕まれていく。

 人体がえぐられ、内部構造があらわになっていく様は、かなりグロい。

 しかし、先輩の身体がほとんど薄くなっても、男は生きていた。

「あちゃ〜。ちょっと足りなかったか。こんなことなら、ダイエットなんかしなきゃよかったなぁ」

 これが先輩の最後の言葉……。

 黒い霧になって、完全に消失した。

「は……ははははあはっははあぁあああ」

 男は、人体モデルのようになっても、まだ生きていた。勝ち誇ったように笑ってる。

「せんぱぁい」

 あたしは、この言葉をなんとか絞り出したことしか覚えていない。記憶はここで途切れてる。

 

 

「がああああぁぁあぁああぁぁぁぁぁああ」

 萌の口から雄たけびのような声が生まれ、足下に魔方陣が浮かんだ。

 髪と瞳が紅に変化する。

 そして、いまだに笑っている男に近づき、おもむろに殴打する。

 倒れた男に馬乗りになって、さらに殴打。殴打。殴打。殴打。

 4発目で男の顔は潰れたが、一心不乱に殴り続ける。

 もはや肉塊となっても、萌は止めない。

 無表情に殴り続ける。すこしの肉片も残さず叩き潰すように。

「私の可愛い鬼人兵になってことするのよ!1体いないから探してみたら……」

 いつの間にか、壊れた壁の向こうに学園の制服を着た少女が立っていた。例の3人目だろうか。

 萌が、やっと手を止めて、少女に返り血でべとべとの顔を向ける。

「苦労して造り上げたのよ!もう!やっておしまい!」

 少女のその言葉とともに、さっきの男と同じようなヤツらが6人入ってくる。

 全員の手や服が血に濡れてるので、どうやら大分と人を殺してきたらしい。

(注:作者に腕が無いため6人も描き別けられません。よって右から、れもん・めろん・いちご・ぴ〜ち・りんご・すいか、と命名します。)

 萌が笑みを見せた。新しい獲物を見つけた笑み、迸る衝動をぶつけられる物を見つけた笑みだ。

 

 萌が右手を振るうと、れもんの口にステッキが突き刺さり、壁にれもんを縫いつけた。

「ぬうあああああ」

 れもんが抜こうとステッキに触れた瞬間、ステッキから白い光が漏れ、爆砕した。

『すぱぁぁぁん!!』

 胸から上を吹き飛ばされ、大量の血を吹き上げながら、れもんは床に倒れこむ。びくびくと痙攣をして、やがて静かになる。

 皆があっけにとられている間に、萌はすいかに肉薄する。

 すいかが気が付いた時には、萌の両手の指が腹とこめかみに深々と刺さっていた。合計8本。

 すいかが何の抵抗もする間も無く、萌の指が発光して、魔力を発する。

 内部に膨大な魔力を注ぎ込まれ、すいかはぶくぶくと膨れ上がり、破裂。

『ばしゃぁぁん!!』

 降り注ぐすいかの臓器や血を浴びながら、萌の笑みが更に深くなる。

 ここにきて、やっと他の男が対応できた。2人が萌に迫る。右からりんご、左からめろんが来る。

 まず、りんごの右ストレートが来たが、萌は回避せずに自分の拳を真っ向から叩きつける。

 りんごと萌の拳がぶつかり、りんごの腕は崩壊。

 筋肉や神経の繊維がばらばらにほつれ、鮮血と悲鳴を撒きながら、りんごは倒れこむ。

 それを確かめもせず、萌は左に手を伸ばした。

 ちょうど来ていためろんの両目と口に、萌の左手の指が入り込んだ。

 そして、萌が左手をひねると、

『めきょ!!』

 と、音をたてて、めろんの顔の正面を覆う骨と肉がはずされ、引き千切られる。

 萌が間髪を入れずそこに右手を叩き込み、辺りにめろんの脳漿が四散する。

 しかし、萌が次の体勢をとる前に、後ろからぴ〜ちが抱き付いた。羽交い絞めだ。

 残るいちごが、萌の前に立ち、殴りつける。

 が、萌は打撃を気にすることなく、いちごに襲い掛かった。

 手は捕まれているため、噛み付く。

『ぐちゃ!!ぐちゃ!!ぐちゃ!!』

 ぴ〜ちといちごの抵抗をものともせず、萌はいちごの首を半ばまで喰いちぎって、顔をはなした。

「…ひゅ……っっ……」

 空気が漏れるため、いちごは悲鳴も上げられない。

 そして、萌のハイキックが首に決まり、いちごの顔は剥がれて転がっていった。

 ハイキックの時に望めるパンチラを、気にするものはもはや誰もいない……。

 萌がゆっくりと顔を後ろに向けていくと、ぴ〜ちと目が合った。

「ひっ!」

 間近で萌の目を見たため、ぴ〜ちから思わず悲鳴がもれた。それほどの混沌とした怒気が渦巻いていた。

 萌が腕を掴むと、あっけなくぴ〜ちの両腕は握り潰された。ホールドが外れる。

 その隙に、萌えは体を回し、ぴ〜ちの胸に右の手刀を突き刺す。そのまま心臓をくびり潰す。

 そして、左手もそこにねじ込み、両側に開いていく。

『ぶぢぶぢぶぢ!』

 繊維が断裂する音とともに、ぴ〜ちは2つに引き裂かれ、絶命した。

 最後に、こっそり地面を這って逃げようとしていたりんご(右手潰されたやつね)を蹴り上げる。

 眼前にまで上がったりんごの顔にアイアンクローをかます。

 りんごは暴れたが、

ばすっ!!!

 持ち上げられたまま、零距離で顔面に魔法を叩き込まれる。

ばすっ!!!

ばすっ!!!

ばすっ!!!

ばすっ!!!

ばすっ!!!

ぱぁぁぁん!

 7発目で顔が吹っ飛び、静かになった。

 そして、おまけとばかりに1bくらいの瓦礫を、放心して座り込んでいた制服の少女に投げつけ、粉砕する。

「ぐおおおおおぉぉおおぉぉおおおおお」

 萌の慟哭が天に響きわたった。まだ殺し足りないかのように。

 漆黒の夜空はどこまでも深く闇に満ちていた。

 

 

 全てが終わった後、パンダはしみじみとひとりごちる。

「1st.ブック『破壊の魔神』の覚醒と解放かぁ……。議会が黙ってないよなぁ。あぁ、怒られるにゃ〜」

 うなだれながら、萌を回収しにいった。

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Bori

あたしは今、先輩といつものようにカフェテリアで食事を取っている。
「先輩、あ〜んして?」
そう言うと、お手製のタコさんウインナーを先輩の口元に持っていこうとした。
「も〜え、ごめんね。私、そろそろいかなくちゃ・・・。」
あ・・・あれれ?先輩の体が段々と薄くなっていく。
あたしは、慌てて先輩の手を握りしめようとした。
でも、掴めない。通り抜けてしまう。
「じゃぁね、も〜え。私がいなくても、しっかりするんだぞ!」
「せ、せんぱいっ!」
あたしは、飛び起きた。
どうやら今のは夢だったみたい。
でも、先輩があたしの前から消えてしまったのは夢じゃない。
あたしの目に、まだ先輩の最期の姿がしっかりと焼きついている。
「今日は珍しく早起きだね、萌たん。」
ウグィスは平然としている。
「ねぇ、あの後・・・、そう、先輩が霧になって消えてしまった後、一体何があったの?
そこから、あたしの記憶がとんでるんだけど・・・。」
「安心して、萌たん。キミの記憶がとんでるのは、多分ボクが辺り一帯に忘却魔法を使ったから、キミにもその影響が出てるんだと思う。
あの後は、キミがあの男にとどめをさして終わり。ただ、それだけだよ。」
「でも、なんで忘却魔法なんか使ったの?」
「実は、あの時キミが変身するところを、多くの人に見られてたみたいなんだ。この星では、変身魔法の使用は極刑だよ?
ボクの魔力にも限界があるから、もうちょっと気をつけてね・・・。」
「ご、ごめん。わかった・・・。」
「じゃ、学校へ行く支度をしないと。」
「う、うん・・・。」
あたしは、身支度をすませ、トースト1枚とコーヒーを取り、学校へ出かけた。
 
校門の前まで来ると、生徒がなにやらざわざわしている。
話を聞いていると、やはり先輩と、講師達のことについてみたいだ。
そうこうしてるうちに、あたしは生徒達の中にかおりんの姿を見つけた。
「おはよっ、かおりん。」
無い元気を搾り出し、あたしはかおりんの背中をたたいた。
「あ、おはよ、萌。今日は早・・・」
振り向いてあたしを見た途端、かおりんは足元をぐらつかせ、地面に倒れこんだ。
「ちょ、ちょっと、どーしたの、かおりん!?」
「あれれ、なんか萌の顔を見た途端、体に力が入らなくなっちゃったみたい・・・。
や・・やだ・・・、寒気までしてきた・・・。」
かおりんの顔はみるみるうちに青くなっていった。本当に気分が悪そうだ。
「昨日いろいろあったから、疲れてるんじゃないかな・・・。」
「そ、そうかもしれない・・・。わたし、今日は早退するわ・・・。」
「それがいいと思う。大丈夫?立てる?」
そう言って、あたしが手をかそうと、近づけた瞬間・・・
 
バチンッ
 
かおりんがおもいっきりあたしの手を払いのけた。
「ご、ごめん・・・。わたし、本当にどうしちゃったんだろ・・・。なんか、体が萌を拒絶してるみたい・・・。
だ、誰かに手伝ってもらうから、萌は教室に行って。もう、授業も始まるし・・・。」
「そ・・・そう?じゃ、じゃぁお大事にね。」
そういうとあたしは教室へ向かって走った。
 
1時間目の授業は、魔法物質学。
これまた鬱陶しい授業だ。
昨日の件については、後日講堂で詳しく説明がなされるらしい。
そういえば、かおりんは大丈夫だったのだろうか。
あたしは右手の掌をみつめた。
結構、赤く腫れている。
あたし、かおりんに嫌われてるのだろうか。
何か、イヤなことしたのかなぁ・・・。
もしかして、あたしは先輩だけでなく、かおりんという親友まで失ってしまったのだろうか。
そう思うと、あたしは猛烈な孤独感に襲われた。
このマイペースな性格のせいか、あたしにはほとんど友達がいない。
かおりんだけが、唯一親友と呼ぶことができる存在だった。
でも、かおりんとはもう親友をやっていけない。
そんな気がした。
今日の出来事で、2人の間に深い溝ができてしまったのは事実だ。
あたしには、この溝を埋める勇気も、気力も、もう残ってない。
優しかった先輩、信頼できた親友。
あたしは、この2日で大きなものを失った。
今まで、この二人がいれたから、あたしは頑張ることができた・・・。
あたしは授業中、顔を伏せたままあげることがでできなかった。
そして、全ての授業が終わると、あたしは意味もなく帰路を急いだ。
 
家に着き、玄関を開けると、母親と父親が口論している。
「ったく、あんたみたいな煮えきらないやつをみてると、イライラしてくるのよ、この安月給!」
「んだと〜!誰がメシを食わせてやってると思ってるんだ。この根性ババぁ!」
こんな会話を三日三晩延々と続けている。
あたしは、こいつらには頼れない。頼りたくない。
あたしは口論している2つの肉塊を相手にせず、2階にあがり、自分の部屋にとじこもった。
「ウグィス、いないの?」
呼んでも返事がない。
どうやらいないみたいだ。
「肝心なときにいないんだからぁ・・・。」
再び強烈な孤独感があたしを襲った。
あたしはベッドに顔を伏せ、泣きじゃくった。
「あたし、これからどうすればいいのよ・・・。独りじゃ何もできないよ・・・。さみしいよ・・・・。」
泣き疲れると、あたしの顔には何故か笑みがこぼれていた。
「あたし、何笑ってんだろ。何もおかしいことなんてないのに・・・。とうとうコワレちゃったかな?
あは・・あははははは・・・・あははははは・・・・。」
あたしはベッドに横になりながら、一晩中意味の無い笑いをこぼしていた。
 
その頃、ウグィスは窓の外からその様子を伺っていた。
「萌たん。いいよ・・・、いい感じに仕上がってる。このまま順調に行けば、すべてのブックを使いこなせる日も遠くないだろうね・・・。」
ウグィスは含み笑いをこぼした。
「オルトメ・タパラ。貴様等にこの星は渡さない・・・。この星はボクのモノになるんだからね・・・。」
そう言い残すと、ウグィスは夜の闇へ消えていった・・・。

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